開発と経済のはざま

国際開発・経済・日々の雑記など

ブックレビュー シン・ニホン

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」でも有名な著者による話題の一冊。日本の現状を客観的にとらえ警鐘を鳴らしつつ、AIがもっと普及し一般化していく今後の世界への「伸びしろ」は大きい(日本は産業革命でもcatch-upして成功した)として人材育成、政策と企業のあり方等、様々な提言がまとめられている。相変わらずPhDホルダー・経営コンサル出身ならではの極めて論理的かつ明快な文章とデータでずばずばと本質を突いてくる。

個人的には、AIにかかる提言よりも日本社会全体の生産性を高めるための方策の方が響くところが大きかった。「選択と集中」ではなく高リスクエリアも含め幅広くポートフォリオを張ること、決まりを理解して正しくこなすことでなく(これはマシンがやること)価値観を磨き自分で判断していくこと、未来=課題×技術×デザイン。本書が述べる教育改革、社会保障改革はこのための有効なロードマップだ。高度経済成長時代の成功方式(終身雇用、年功序列等)はスケールアップには有効かもしれないが、グローバルに競争力をつけなくてはいけない今の時代には機能しない。この国の行く末を思うあらゆる世代に必読の一書。