開発と経済のはざま

国際開発・経済・日々の雑記など

2024年総括、2025年抱負

随分と長い間ブログを書いていなかった。2021年4月から新しい職場にて仕事をはじめ、2021年8月には家族で拠点もアメリカに移してすでに4年近くがたった。ブログを書いていなかったのは忙しかったからというにはあまりに長すぎる期間だ。もちろん仕事はしていたし、当初は合間を縫ってオンラインでの勉強や英会話レッスンもしていた。そして時間があれば家族での旅行を計画したり実施したり、ドラマやインスタを見たり、またあれこれとキャリアや人生について悩んだりしているうちに、いつしかブログというアウトプットの場を忘れてしまっていた。

今になってなぜ書くのか。それはきっと自分が立ち止まって跡を残しながら次の道を探すことを求めているからだろう。仕事をどうするか。どこで暮らすか。子供の教育をどうするか。何を喜びとして日々生活するか。何を得て、何を与えるか。満足や充実という感情がこれらの観点で乏しくなってきている証拠である。簡単に答えが出る質問ではないことは分かっているし、考えて決めるものでもないのかもしれない。

だから少しずつ書いていきたい。そんな再出発の第一号として、振り返りと抱負を記す。

 

【2024年総括】

・仕事&学習

この一年、あまり挑戦をしなかった。一昨年は他チームへのクロスサポートをしたり、オンライン学習をしたり、CFAを受けたりしたのだが、去年はパタリとこういった努力をしなかった。一部には今の仕事に対する情熱が薄れてしまったというのがあり、また一部には趣味のポイ活や行き先のない思い云々に身を馳せていたというのがある。本業の方は大事なレポートにかなり注力できたのは良かった。満足がいったかというとそうでもないが、少なくとも、形に残る仕事ができたし上司からも評価された。この仕事をしたことで、自分が望む仕事のやり方はこうしたanalytical workだけではなくて、client engagementや日々の挑戦、試行錯誤、体を動かすことによるexcitementなんだなということを実感することができた。この思いはこれからのキャリア選択でも活きることになるだろう。

あと1年少しで40になる。若い頃抱いていた自己成長や外から見たカッコ良さよりも、どれだけ「楽しいか(ワクワクするか)」をキャリア選択の軸にしたいと思うようになっている自分に気づく。そして、その先は必ずしも自分が得意なこと(例えば、data analysis)ではないということにも気づいている。その接点にあるものは残念ながらまだ出会えていない。この一年、模索する中で見つけていきたい。

 

・家族

家族で過ごす時間は増えたし、旅行もたくさんできた。休日に子供を公園へ連れて行く回数は減ったかもしれないが、最も身近な存在ではいられただろう。教育についての悩みはつきないが、基本的には子供の好奇心や「好き」を促したい気持ちでいる。勉強をあまり見てやれなかったのは少し反省している。それからパートナーとの間で子供の教育方針や今後の生活方針(パートナーの再キャリア含めた)のすり合わせができないままでいることも。

 

・自分

ポイ活に相当の時間をつかってしまった。これは家計の足しと旅行の充実にはなったが、長期的にみて果たして貴重な時間を使う価値があったかどうかは疑問である。趣味の領域でもあるので、今後も続けることになるのだが、少しペースダウンしてサステイナブルな形でやろうと思う。行きたかったニューメキシコや京都のPH、海外旅行先に行けたのは良かった。家族にもポイントで宿泊プレゼントができたのでよい時間投資であった面も大きいことは間違いない。SNSにも時間を使いすぎた。制限しないといけない。映画・ドラマはそこそこ見ることができたが、本の冊数は減った。最後に記憶に残ったものリストを記しておく。

 

【2025年抱負】

・仕事&学習

まずは本業で成果を出す=レポートを発刊する、プレゼン機会を積極的に作って実施する。ペーパーも(これは他人の頑張りによらざるをえないのだが)、出したい。それはしっかりやった上で、次のキャリアを見ていきたい。可能性としては、①元の職場(日本)に戻る、②今の職場で海外転勤の機会をみつける(今のユニットでの異動か、他ユニットに移るか)、③第三の転職先を見つける(海外か、日本か)と幅広い。転職サイトに登録してエージェントとも話したりしているのだが、やはり軸がはっきりしていないので、何を見ても決められない自分がいる。「軸を作って、行動に移す」ことを実践したい。近いうちにこの点は別ブログにまとめたい。

それから、しっかり本を読んで、英語向上とスキルアップをする。audibleの活用も効果的なので、本(和・洋)、audible(洋)、online course(洋)、ニュース(主に洋)を併用して自己強化に励みたい。英語のアウトプット機会も増やさないといけない。これはonline英会話が効果的かもしれないが時間と場所を見つけるのが難しい。もう少し考えたい。

 

・家族

引っ越すかどうか、引っ越すとしてどこに行くかで大きく変わってしまいそこの方針を打ち出せないでいるのがもどかしいのだが、こちらにいる間は子供の主体性アップと英語の増強を念頭に決断していきたい。一緒にいる時間は遊んだり話を聞いたり勉強を一緒にすることを徹底したい。妻とのすり合わせは長年の課題なのですぐにどうにかなる話ではないのだが、なんとか進めたい。旅行もできる限り行く。

 

・自分

SNSの時間を減らす(1時間/日)。ポイ活も必要最低限にしてダラダラと携帯でチェックしたりしない。その分、読書や映画・ドラマ鑑賞を増やす。

ブックレビュー 2020年6月30日にまたここで会おう

47歳にして世をさったエンジェル投資家・滝本哲史が東大で行った講義をまとめた講義録。氏の著作は実は一つも読んでいなかったのでライトに読めそうなこちらをセレクト。

無限の将来をもつ学生に対する愛と期待に満ちた書だった。

滝本氏は圧倒的に頭が良く回転が速く、法学者→戦略コンサルタント→エンジェル投資家というキャリアはそれだけみるとよくありそうなものだが、この本を読むと、世の中を少しでも良いものに変えたいという氏の想いが伝わってきた。

高度に複雑化された現代社会において、さまざまな邪念を振り払いながら、自分が信じる道を進む(あるいは道を見つける)ための一冊。

 

いい波に乗るためには、波が来るのを見てから走り出しても遅いんですね。波が来てなくてもずっと海辺に立っていなきゃいけなくて、その間ずっと、他の人から見たら「頭がおかしい人」である必要があるということ

 

新たな環境、再出発

4月から新たな環境で仕事をすることになった。といってもオフィス出社はなく完全にリモート。

まだ2日しかたっていないし直属のボスともまだ話せていないという拙い状況だけど、精一杯がんばりたい。

国際機関ということで、まずはカルチャーに慣れるのに苦労しそうだ。ボスはインド人、先輩的同僚はアメリカ人、イタリア人、トルコ人と、これでもかというダイバーシティ。いままでの職場のような手続き業務(いわゆるロジ)がほぼない(はず)なので、個人の能力がキリキリ問われる。チームの中で自分にしかできないこと、少なくとも自分が比較優位をもてる領域を研ぎ澄ましていく必要がある。

それから、アウトプット。考えていることをとにかく形にして、発信していくことを心がけたい。2年間の間に、ペーパーを2枚(自分のイニシアチブで)、そしてチームのレポートにsignificantな貢献をしたい。

どのような働き方になるのかまだ全くわからないので、ここに徐々に蓄積を残していこうと思う。

 

2021 謹賀新年 抱負

世間の騒乱とは裏腹に、2020年は働き始めてから最も穏やかな一年だったかもしれない。緊急事態宣言以降の在宅勤務で家族と接する時間は増え、今後のキャリアについてあれこれ考える時間も多かった。2019年駆け足で進めたオンライン学習は失速してしまい読書時間も思うようには取れなかったけれど、国際機関のポジションにいくつか応募して人と話したり面接の準備をしたりすることで勉強にもなった。結果、4月からのあらたな挑戦機会をつかむこともできた。

2021年は(今のところ)再び渡米して、全くあらたな環境で「経済」と「開発」に直結する仕事をする。コロナ禍で不確定なことも多く、いつ向こうのオフィスがオープンするかも分からないし、家族を連れて来れるかも分からない。けれど、2020年が混乱の一年だったとすると2021年は混乱の中で何らかの方向性が決まる一年になることは間違いないし、その中心はやはり米国なのだろうと思う。その環境で、出来るだけアンテナを張り巡らせて思索を続け、同時に(アメリカ社会で最も求められる)アウトプットを最大限行う年にしたい。幾つかの抱負を書き留めておきたい。

【仕事】

・新しいチームに認められる(チームにおける自分が役立つ領域を見つけ確立する)

・毎週新しい人とマンツーで話す

・毎月公開できるinstitutional outputを出す(ブログ、ペーパー、プレゼン等)

・論文執筆を開始する

【学習】

・20冊読む(斜め読みは数えない。洋書を10冊以上)

・70論文読む

・Courceraのネットワーク分析、Deep learningのコースを終え、オンラインで+2コース学習する

・毎日2時間は仕事以外の学習時間を作る。Economist1記事を読む。

【プライベート】

・週3回・計3時間以上運動する

・土日どちらかは家族デーを死守する

ブックレビュー Good Economics for Hard Times

2019年ノーベル経済学賞を受賞した3人のうち2人、Abhijit BanerjeeとEsther Duflo(2人は夫婦)による本書。原文で読んだからか3ヶ月近くかかってしまったが、飽きずに最後まで読むことが出来た。全てのchapterにおいて経済学の用語や数式を出来る限り用いず、読者の視点に寄り添いつつ「常識」をデータでもって覆し議論を進める手法は見事の一言。

本書で扱われるトピックは、移民、貿易、格差、経済成長、気候変動、税とベーシックインカム等、今日重要視されるトピックを俯瞰している。本書を読むとそれぞれについてなぜ問題となっているのかがよく分かる。移民は職を奪うのか、ロボットは職を奪うのか、貿易は格差を拡大するのか、税を下げると経済成長は進むのか、高所得者への累進課税を進めると働くインセンティブを奪うのか、気候変動の深刻化はイノベーションを生むのか。いずれも、社会は経済合理性を前提には動いていないことが問題認識の背景にあると言えるかもしれない。だからといって経済学は役に立たないということではなく、むしろ、経済学のアプローチで理論と実証結果を示しつつ、その差への考察から示唆を得ていくのが有効なのだ。

After all , most of us want to protect an image of ourselves as intelligent , hard - working , morally upright individuals , both because it is simply not pleasant to admit we might in fact be dumb , lazy , and unscrupulous , but also because maintaining a good opinion of ourselves preserves our motivation to keep trying in the face of whatever life throws at us. 

 

 

ブックレビュー 資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界

ノーベル経済学賞に最も近かった日本人経済学者の伝記として、アダム・スミスから始まる経済学思想の移り変わりと翻弄される時々の政治(逆も然り)の教科書として、アメリカ型資本主義と闘い真の豊かな社会の実現を考え尽くした一人の男のロマンとして、何度も読み返し指針としたい一書。

なによりも、経済学を学んだ者からしたらスーパーヒーローであるケネスアロー、ポールサミュエルソン、ロバートソローと対等に議論し、ミルトンフリードマン、ロバートルーカスと激論を交わした日本人がかつていたという事実に、突き動かされるものがある。ジョセフスティグリッツジョージアカロフは宇沢の弟子にあたる。

輝かしいアメリカ滞在時代の功績に比して、宇沢が日本に戻ってからの国際的評価は必ずしも高くない。しかし、主流派経済学が「外部性」として取り組まなかった公害や環境問題に直面し、社会的共通資本の考えを一人で発展させたことは決して無意味でなく、リーマンショック後、SDGやESGが叫ばれる現在に氏が存命であればきっと脚光をあびていたのではないだろうか。

この書を読んだことで、ジョーンロビンソン含む様々な経済学者の思想に出会い、経済学史を改めて学ぶこともできた。これほどの書を作るためにどれほどの時間と努力を要したか、想像もつかない。佐々木氏に感謝したい。

 やっぱり早く論文書かないと。

資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界

資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界

  • 作者:佐々木 実
  • 発売日: 2019/03/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

 

ブックレビュー シン・ニホン

イシューからはじめよ――知的生産の「シンプルな本質」でも有名な著者による話題の一冊。日本の現状を客観的にとらえ警鐘を鳴らしつつ、AIがもっと普及し一般化していく今後の世界への「伸びしろ」は大きい(日本は産業革命でもcatch-upして成功した)として人材育成、政策と企業のあり方等、様々な提言がまとめられている。相変わらずPhDホルダー・経営コンサル出身ならではの極めて論理的かつ明快な文章とデータでずばずばと本質を突いてくる。

個人的には、AIにかかる提言よりも日本社会全体の生産性を高めるための方策の方が響くところが大きかった。「選択と集中」ではなく高リスクエリアも含め幅広くポートフォリオを張ること、決まりを理解して正しくこなすことでなく(これはマシンがやること)価値観を磨き自分で判断していくこと、未来=課題×技術×デザイン。本書が述べる教育改革、社会保障改革はこのための有効なロードマップだ。高度経済成長時代の成功方式(終身雇用、年功序列等)はスケールアップには有効かもしれないが、グローバルに競争力をつけなくてはいけない今の時代には機能しない。この国の行く末を思うあらゆる世代に必読の一書。