大学院合格者向けイベント
ほとんどの大学院では合格通知が出て約1ヶ月後となる4月の上旬に合格者向けイベントが開かれます。呼び方は、Admit DayだったりHosting Eventだったり様々ですが、内容としては、プログラムの説明に加え在校生との交流、1−2講義の聴講、教授陣によるパネルディスカッション、家のツアー等を組み合わせたものです。学校によってどこに重きを置くかは異なっており、各大学の戦略を垣間見ることが出来ます。
受験生にとってキャンパスビジットは出願校を決めるために出願前に行うのが通常なのかなと思いますが、もし合格後にどの大学に行くか悩むことがあればこの合格者向けイベントへの参加を絶対お勧めします。大学側がしっかりプログラムを作っているので万遍なく知ることができますし、生徒や教授から生の声が聞けます。そして何より他の合格者との会話を通じて、合格者の職業や雰囲気、考えていること等を知ることができ、これが極めて有用です。
私もイベント参加前はハーバードとプリンストンで相当悩んでいたのですが、イベントに参加したことによってハーバードに意を固めることができました。
なかなか4月上旬に休みを取って外国に行くことは容易ではないですが、合格者向けイベント、オススメです。
ブックレビュー:グローバリゼーションパラドクス
私がハーバードのMPA/IDコースに行きたい理由の1つに、ダニ・ロドリックが教鞭をとっていることがあります。国際開発、なかでも経済発展と国際経済の研究者であり産業政策の必要性の議論やグローバリゼーションへの警鐘が有名です。書籍になっているのは本書のみですが、ロドリックの考えの根幹にある行きすぎた自由経済批判を良く理解することが出来ます。
現在主流となっている新古典派経済学では政府の役割を一定程度評価しつつ経済主体の自由な経済活動が前提となっています。特に貿易の自由化、資本移動の自由化は現代社会が疑いなく向かっている方向であり、戦後の東アジアを中心とした急速な経済発展はこの自由化政策に因るところが少なくありません。生産と消費のグローバル化は間違いなく新興経済に大きなチャンスを産み出しました。しかし、自由化はある程度規制されるべきとロドリックは説きます。貿易自由化は各国独自の産業発展を困難にし、資本移動の自由化は金融危機を引き起こすためです。現在先進国とされている欧米諸国や日本もその経済発展過程において相当の保護主義をとってきました。それなのに、なぜ途上国に対して自由化を課すのか。先進国の便益しか考えていないのではないかと議論は展開します。
このグローバリゼーション批判に先立ち、その他の手段として民主主義・国家主権のいずれかを諦めるという手段も示されています(この3つを全て両立することは不可能というのが、著者の言うパラドクス)。民主主義を諦めるとはすなわち弱者を置き去りにした総体としてのみの経済発展、国家主権を諦めるとはグローバル政府の設立(EUの世界版)のようなものですが、いずれも実現可能性は乏しく人々の理解を得ることは困難です。また、本書が出版されて以降のEUの衰退やBrexit・トランプ政権発足をみても、この2つは現代社会の基礎でありないがしろにできるものでないことがよく分かります。
ロドリックはもちろんグローバリゼーションそのものを批判しているわけではありません。現に書籍全体を通じてブレトンウッズ体制時の「緩い」グローバリゼーションを評価しており、各国の政策自由度を高めた現代版ブレトンウッズをどのように実現するかという議論が後半なされています。WTOセーフガード協定の活用、貿易・資本規制を強める変わりに労働移動の自由化をもう少し進めること(これだけで莫大な経済価値をもたらす)等の具体的な提案がなされておりいずれも納得できるものです。
中国・アメリカの2強大国を筆頭に急激にナショナリスティックな政策が実行されていくのは、本書の趣旨と同じ制限されたグローバリゼーションの考えとは一致しているものの、著者が意図していた世界とは全く別の世界が実現されようとしているのではないかと懸念を覚えます。
是非、進学先にて著者の考えを聞きたい思いです。
グローバリゼーション・パラドクス: 世界経済の未来を決める三つの道
- 作者: ダニロドリック,柴山桂太,大川良文
- 出版社/メーカー: 白水社
- 発売日: 2013/12/20
- メディア: 単行本
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留学までにやりたいこと
最後の出願校であるスタンフォードIPS向けのエッセイを仕上げ校閲に出しました。ここの出願が終わると、出願関係はハーバードMPAIDの奨学金応募を2月までにやるのみです。ハーバードは奨学金を殆ど出さないことで有名で、後でお金の面で悩むのはイヤなので今出来ることはすべてやろうという思いから奨学金も応募することとした経緯です。競争率は極めて高く、なかには書類選考の後Skype面談がある奨学金もあるため非ネイティブの私は圧倒的に不利なのですが、出さずに後悔するよりはいいかなと思います。
出願が一息つき少し時間ができたので、留学までにやっておきたいことを徐々に始めています。具体的には、①歴史・経済関連の読書と②英語のブラッシュアップです。両方とも留学後少しでも良いスタートを切りたい思いからですが、①については今後マイノリティの日本人として日本を代表して意見を求められるような機会が多いことは間違いないので、今の段階で日本史・日本の経済についてしっかり勉強しておく必要性を感じたからです。高校・大学と理系専攻だったことからこれまで日本史・日本経済は体系的に学んでいなかったので、固めの教科書を一冊ずつ読みたいなと思っています。②については言わずもがなですが、特にスピーキング力を上げようと思います。うまくいけば4月に合格校のOpen Houseに行く計画(これはまた別途書きます)なので、そこで恥ずかしい思いをしないために(まぁ、確実にしますが)、英語を話す機会を積極的に作っていきたいと思います。
出願結果2つ(フレッチャー、SAIS)
アーリーで出願していたタフツ大学フレッチャースクールMIBコースとジョンズホプキンス大学SAIS MA(IDEV)コースの出願結果が届きました。どちらも合格。ほっ。これを落としたら他にも受けようかと思っていたので一安心。SAISは25000ドルの奨学金オファー(1年目)ももらいました。SAISは志望度もそれなりに高いので、少し考えた結果Yale大学への出願は辞めることにしました。準備は整っているので出すだけなのですが、受かっても進学する確率は(SAISに受かった今)かなり低いので、105ドルのFeeが勿体ないとの決断です。ということで残すはスタンフォードのみ。これのエッセイの一つ:論文サンプルがやはり最後まで残りました。かなり志望度が高いだけに、年末年始、がんばりたいと思います。
GREの重要性
先週5回目のGREを受験しました。5回までしか受けれないので泣いても笑ってもこれが最後です。幸い、Verbal, Quantitativeとも過去最高点(V155,Q170)だったので、もしWritingが4.0以上であれば、今回の成績が過去最高となります。3.5以下だったときは、どれを提出するか悩むことになります。
そんなGREについては、TOEFLを受けるノンネイティブにとってはさほど重要でない、GREをがんばる時間があればエッセイを磨け、というようなことも言われます。イギリスの大学はGREを求めていませんし、英語力はTOEFLないしIELTSでみるということは間違いないのでしょう。ではなにが見られているのか。幾つかの大学のAdmissionブログやrequirementを見る限り、3セクションのうちQuantitativeが群を抜いて大事と言えそうです。確かに、TOEFLでは測れない能力ですから。とはいっても内容は普通に中学・高校に行っていた日本人にとっては十分満点が狙えるレベルです。二等辺三角形:isosceles triangle等の用語を覚えて、引っかけ問題のパターンを覚えることに尽きます。ここで165-170(90%以上)を取っておくことがマストになります。ではVerbalとWriting(AWA)はどうか。これはあまりにも悪い数字でなければそんなに気にする必要はないでしょう。具体的には、Verbal 145点以上、Writing 3.0以上であれば十分です。プリンストン等はQuantitativeに加えてWritingを重視する、とAdmissionページに書かれていることもあり、この2つのうちだとWritingにより注力しましょう。日本人のほとんどは3.0か3.5です。4.0が取れれば差別化できますし、別のエントリーでも述べますが4.0をとるのはそれほど努力を要しません。
Quantitative以外は入学にそれほど関係ないと思われるGREですが、大学がオファーする奨学金には影響するという声もあります。奨学金はネイティブ・ノンネイティブに特定の区別なく決定される気がしますし、そうしたときに見られるのは財政状況とテストの成績だと思われます。
結論です。ノンネイティブの方はまずTOEFLに注力しましょう。100点はマスト、できれば105、110を狙ってください。GREはTOEFLが終わってからで大丈夫です。Quantitativeを最優先してください。165以上。Verbalは最も努力が報われません(単語500覚えても実際出てくるのは1-2とか)ので、時間がなければ無視です。
以上、まだ一つも出願結果出てきていないので何を偉そうに、というエントリーでした。