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ブックレビュー 資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界

ノーベル経済学賞に最も近かった日本人経済学者の伝記として、アダム・スミスから始まる経済学思想の移り変わりと翻弄される時々の政治(逆も然り)の教科書として、アメリカ型資本主義と闘い真の豊かな社会の実現を考え尽くした一人の男のロマンとして、何度も読み返し指針としたい一書。

なによりも、経済学を学んだ者からしたらスーパーヒーローであるケネスアロー、ポールサミュエルソン、ロバートソローと対等に議論し、ミルトンフリードマン、ロバートルーカスと激論を交わした日本人がかつていたという事実に、突き動かされるものがある。ジョセフスティグリッツジョージアカロフは宇沢の弟子にあたる。

輝かしいアメリカ滞在時代の功績に比して、宇沢が日本に戻ってからの国際的評価は必ずしも高くない。しかし、主流派経済学が「外部性」として取り組まなかった公害や環境問題に直面し、社会的共通資本の考えを一人で発展させたことは決して無意味でなく、リーマンショック後、SDGやESGが叫ばれる現在に氏が存命であればきっと脚光をあびていたのではないだろうか。

この書を読んだことで、ジョーンロビンソン含む様々な経済学者の思想に出会い、経済学史を改めて学ぶこともできた。これほどの書を作るためにどれほどの時間と努力を要したか、想像もつかない。佐々木氏に感謝したい。

 やっぱり早く論文書かないと。

資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界

資本主義と闘った男 宇沢弘文と経済学の世界

  • 作者:佐々木 実
  • 発売日: 2019/03/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)